立教大学

耐震補強工事

背景

1923年に発生した関東大震災で中央部の塔や東西の屋根などに被害を受け、25年の修復時に中央部を3階から2階(および塔屋)へ、屋根の東西の形状を“切り妻”から“寄棟”にするなどの外観の変更がなされました。その後、震災や戦災などを乗り越え、長く教室棟として利用されてきましたが、94年に実施された外観修復工事(瓦、外壁修復)のほかには大きな改修整備は行われていませんでした。レンガ造建物群は95年に実施した建物調査を基に計画的に耐震補強工事を進めており、今回の工事も東日本大震災の影響によるものではなく、その耐震対策の一環です。本館は、鉄筋コンクリートの柱・梁を部分的に持つ併用構造であり、2階建てで大空間を持たないため、耐震性能上、ほかのレンガ造建物より比較的安全性が高いことから、同時に進めてきた池袋キャンパス再開発計画による教室数確保の完了を待ったうえで最後に着手することとなりました。

工事概要

耐震補強は、新築建物と同様の耐震性能確保を目標に、鉄筋コンクリートと鉄骨を組み合わせた補強を行いました。1階の中央部以外の床および基礎を鉄筋コンクリート造により補強・再構築し、1、2階を貫通する鉄骨の柱、また間仕切り壁や天井内部に鉄骨の補強材を設置して、元々の建物構造体と一体化し建物全体として耐震性能を確保しました。

本館(1号館/モリス館)耐震設計図 2階平面図 建物中央の棟周辺を鉄骨ブレースにより補強 1階平面図 教室間の間仕切位置に鉄骨ブレースを配置 教室:廊下間の間口部を避ける位置に鉄骨ブレースを配置 断面図 建物中央の棟周辺を鉄骨ブレースにより補強
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発見

屋根裏に残されていた照明器具やバスタブ

屋根裏や地下には、かつて教室で使用されていた机や椅子、用途や設置場所が不明な機械仕掛けや照明器具、校宅で使用されていたと思われるバスタブなど、さまざまな年代の物品があり、これらの整理から作業を開始しました。

また並行して内装材解体を進めると、壁は過去に何度か塗り替えられた形跡があり、写真のように下部がうぐいす色に塗られていた時期があったことが分かりました。その壁には、当時の学生運動を思わせるポスターが貼られたままとなっていました。そのままの状態で新たな壁が設置されたようです。また、黒板をはがすとその内側には古い黒板(石盤)が残っていました。これはスレートと呼ばれる屋根材や硯に用いられる黒い石で、これをつなぎ合わせて利用されていました。

下部がうぐいす色に塗られた壁。内装材をはがすと、
内側にレンガがあり本館がレンガ造建物であることが分かる。

解体~基礎再構築

内装材解体後、1階床および地中梁などの躯体を解体し、新しい地中梁や基礎の施工を行いました。既存の地中梁や基礎では、建物全体に設置される新しい構造体が伝達する力を受け止められないためです。これらの力を受け止め地盤に伝達するために、新しい地中梁や基礎には直径25~30mmの鉄筋が何本も使用されています。

内装材の取り外し

工事の準備として、床材、天井材などの仕上げ材や間仕切壁などを撤去し、本館を躯体のみの状態“スケルトン”にしました。既存の木製建具は工事前に大切に取り外し、補修を施した上で改修後の建物に再設置をしています。

1階床の撤去

今回の耐震補強は元の建物の構造材を活かす方針として行いましたが、基礎部分の補強をする為には既存の1階の床スラブの撤去は必要でした。工事中においても建物の安全を確保するため、ジャッキで補強をしながら工事を進めました。

基礎補強

基礎を新設するための型枠を設置し、鉄筋工事が進んでいる時の様子です。配筋後にはコンクリートを型枠に流し込み、既存の基礎と一体となり地震に十分に耐えられる構造としています。

構造

本館は部分的に鉄筋コンクリートの柱や梁を持つ併用構造ですが、この既存の柱や梁と、新しく設置される鉄骨のブレース(補強材)や梁とを一体化させる方法をとっています。これらの鉄骨は、教室・廊下間や教室間の壁の内部、1、2階の天井裏に縦横に張り巡らされ、本館が頑強となったばかりでなく、構造的には新しい建物として生まれ変わったと言えます。

鉄骨ブレースによる補強